バングラデシュは北から南へ流れるジャムナ川によって国土が東西に分断されており、人の移動や物流の面で大きな支障となっています。そこで、世界銀行、アジア開発銀行、国際協力銀行が強調して融資を行い、ジャムナ川に道路・鉄道・電気・ガス・通信の機能を持ったジャムナ多目的橋が架けられました。この橋を造ったのは日本企業ではなく、韓国の企業連合です。日本企業は技術審査で落ちてしまったらしく、コストで負けたのならまだしも技術で負けるなんて悔しいというお話も聞きました。
実はこの橋の建設によって多くの近隣住民が住居を移転することを余儀なくされました。移転先の村で聞き取り調査を行ったところ、「住民移転の補償金は十分でなかった」「移転前は畑で農作物を生産していたが、移転後の村では人力車を引く以外に仕事は何もない」「生活はこれまでより苦しくなったが、橋ができたのはよかった」という答えが返ってきました。このような状況で「橋ができてよかった」というのはとても不可解な答えなのですが、彼らは他の多くのバングラデシュ人と同様、心がとても純粋で批判的精神はあまり持ちあわせていないように思われました。
ジャムナ橋の通行台数は毎年増加しており、2006年は交通量の計画が3,019台/日だったのに対し、5,678台/日という実績になっています。通行料収入から維持管理費などをさし引いた収支も黒字であることから、プロジェクトとしては成功しているという説明を受けました。しかし、実際に橋を渡ってみると、もっと多くの車両が通行できる余裕はあるのに、あまり車は走っていないという印象を受けました。私たちがこの橋を渡ったのがお昼頃で、朝夕はもっと車が走っているということでしたが、あれだけ車の走っていない瀬戸大橋の交通量が約14,000台/日であることを考えれば、この橋にはまだまだ十分余裕がありそうです。
この橋の通行料である1,000タカ(中型トラック)や400タカ(乗用車)はバングラデシュの物価水準からみれば極めて高額なものであり、フェリーを使っている車両が依然多いのではないかと思われのですが、ジャムナ川の渡河交通量のうちどのくらいの割合をジャムナ橋が担っているのかは、資料を探してもらったのですがなかったので不明となっています。バングラデシュにおける「体感物価」が10タカ=100円であることを考えれば、1,000タカというのは10,000円で、400タカというのは4,000円になり、橋の通行料はたとえフェリーに対抗できるものであったとしても、決して安いものではないことがわかります。ジャムナ橋の高額な通行料を一時的に引き下げてみて、どの程度交通量や収支が変化するのか調査する社会実験(参考)を実施してみてはどうかと思いました。

写真-1 ジャムナ多目的橋です。

写真-2 バングラデシュの100タカ札にはジャムナ多目的橋がデザインされています。

写真-3 強制移転させられた住民の皆様です。心の純粋な人たちだと感じました。