« 青年海外協力隊 | トップページ | ダッカ廃棄物ツアー »

2008年8月 5日 (火)

グラミン銀行

2006年のノーベル平和賞はバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏(グラミン銀行総裁)とグラミン銀行に授与されました。ユヌス氏とグラミン銀行がマイクロクレジットによって貧困層の自立を支援する社会貢献をしてきたことが評価されての受賞でした。グラミン銀行の事業は1976年にバングラデシュのJobraという村で開始され、1983年には正式にグラミン銀行が設立されました。グラミン銀行はもともとNGOのような小さな組織だったのですが、今では741万人に融資を行っており、80,678の村に2,481の支店があって、25,283人の職員が働く巨大な社会貢献企業(social responsible company)になっています。当初は5人組の連帯保証制度もありましたが、現在では5人組制度は残るものの連帯保証制度はなくなったということです。グラミン銀行のローンの返済率が98%という高率を維持しているのは、借り手の97%が女性であることが理由だとされています。女が現実しか見ていない一方で、男は夢を見る生き物だから仕方がないですね。グラミン銀行は貧しい人に低金利で融資をしているイメージがありますが、同行の金利は以下のようになっており、しっかり収益を求める金利体系であることがわかります。

20% (declining basis) for income generating loans(事業ローン)
8% for housing loans(住宅ローン)
5% for student loans(教育ローン)
0% loans for Struggling Members (beggars)(貧困脱出ローン)

ここで、「declining basis」の金利については以下のような説明がありました。

All interest rates are simple interest, calculated on declining balance method. This means, if a borrower takes an income-generating loan of say, Tk 1,000, and pays back the entire amount within a year in weekly instalments, she'll pay a total amount of Tk 1,100, i.e. Tk 1,000 as principal, plus Tk 100 as interest for the year, equivalent to 10% flat rate.

事業ローンの20%という金利は日本の消費者金融並みに高いと思われますが、バングラデシュは現在インフレ率が10%くらいあるので日本と単純な比較はできません。それでも、バングラデシュ政府が22%(declining basis)で融資を行っているのに比べても、わずかに低金利という程度でしかないというのは興味深いところです。「チャリティで貧困をなくすことはできない」「貧困を克服するのは、一過性のチャリティではなく循環的なシステムである」「返済を伴わない援助は貧困に対して無力である」というユヌス氏の意志が事業ローンの金利にも反映しているものと考えられますが、組織が巨大化する中で収益を重視する普通の銀行になりつつあるグラミン銀行の一面が金利にも現れているように思われました。

国際協力銀行はグラミン銀行の活動を支援するために平成7年度に有償資金協力を行っています。そういうわけで、このたびグラミン銀行発祥の地である1号店を訪れることができました。ここで融資を受けに来ていた女性にインタービューを行いました。グラミン銀行はほとんど女性だけに融資を行っていますが、実際にはご主人など家族と相談して事業を行っているケースが多いようです。この女性も最初は4,000タカ(約6,800円)を借りて夫婦で薬の卸売り事業を始めました。この事業をもっと大きくしたいため、今回は500,000タカ(約850,000円)の融資を受けに来ています。この融資はグラミン銀行に認められたそうなのですが、この女性の理解は「金利のことはわからないけれど、毎週7,000タカを2年間に渡って返済することになっています」というものでした。もしかすると、グラミン銀行は金利の概念を理解していないような女性に借金をさせているのかもしれないと疑ってしまいましたが、この女性だけがたまたま金利のことを知らないだけだったのかもしれません。

それにしても、500,000タカというのは日本のサラ金でも簡単には借りられないような大金です。グラミン銀行の標榜するマイクロクレジットも次第に変わりつつあるのではないかと感じられました。500,000タカもの融資が認められたことには、この女性が300,000タカをグラミン銀行に預けていることが有利に働いているということでした。グラミン銀行は融資をするだけでなく、メンバーの貯金を奨励しているそうで、実際にメンバーの多くは貯金をしているということでした。ちなみに、事業ローンの金利が20%である一方で、貯蓄の金利は8.5~12.0%ということでした。それならば、500,000タカを借りるよりも300,000タカの貯蓄を切り崩して200,000タカを借りた方が有利ということになります。しかし、この女性は「300,000タカの貯蓄は将来のために残しておきたい」と考えていました。もしかすると、グラミン銀行は無知な女性から金利で搾取しているんじゃないの?と疑いをかけたくもなりますが、真相のほどはわかりません。ところで、もしこの女性が借金を返済する前に死んでしまったらどうなるのでしょうか?実はグラミン銀行のローンには「Loan Insurance Programme」という保険がかかっていてペイオフされます。さらに、ローンの借り手には生命保険もかけられていて、保険金が遺族に配分されるということでした。

この後、グラミン銀行の人といっしょに近隣の村へ行って融資を受けて事業を行っている女性たちにインタービューをしたり、女性グループが経営している養鶏場を訪れたりしました。この養鶏場では2,000羽の鶏を飼育して、鶏肉を生産しているとのことです。収益モデルは、ひよこを42タカで買ってきて45日後に200タカで販売するというものなのですが、その間に鶏1羽当たり120タカのえさ代がかかるそうです。もっと鶏の数を増やしたいかとの質問に対しては「病気の発生リスクを考えて、これ以上増やすつもりはない」という冷静なお答えが返ってきました。実はバングラデシュでは鳥インフルエンザが発生しているので、養鶏場に行くこと自体よろしくないと思うのですが、グラミン銀行の人は「鳥インフルエンザは冬に発生するから今は大丈夫」と楽天的なことを言ってました。

Grameen1
写真-1 グラミン銀行1号店です。すべてはここから始まりました。

Grameen4
写真-2 グラミン銀行の説明が行われています。

Grameen2
写真-3 左に並んでいるのがグラミン銀行の融資を受けている女性です。

Grameen3
写真-4 グラミン銀行の融資を受けている養鶏場です。

|

« 青年海外協力隊 | トップページ | ダッカ廃棄物ツアー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 青年海外協力隊 | トップページ | ダッカ廃棄物ツアー »